『月の満ち欠け』

ブックレビュー ☆4つ

『月の満ち欠け』 佐藤 正午
第157回(2017年) 直木賞 受賞

現在上映中の映画 『月の満ち欠け』の原作。
”著者の最高傑作”とか”奇跡の純愛小説”とかいう宣伝文句に乗せられて、図書館で予約。

佐藤 正午の小説を読むのは初めてなので最高かどうかはわからないけど、まぁ面白かった。

ただ、純愛小説って言ってよいのかなぁ?
感動よりも、むしろ恐怖を感じた。

冒頭、東京駅のカフェで対面する主人公と母娘。
もう一人、三角という人物が同席する約束のようだが、それぞれの関係性はまだわからない。
繰り返される、”三角はまだ現れない”というフレーズが不穏な空気を醸し出す。

物語は、愛する女性(瑠璃)の生まれ変わり・輪廻転生が主題なんだけど、転生というより憑依(ひょうい)のほうがしっくりくる。
夫の傲慢さ・執念深さが、瑠璃を死霊にしてしまったんじゃないか、とか。

普通に育った女の子が、7歳あたりで突然前世の記憶をもちはじめ、別の人格になっていく。
それって親としては、困惑どころの話ではない。
今まで育ててきた実の娘はどこへ行ってしまったんだ??。
このあたりは、読み手の年齢・状況によって感じ方も変わるのかな。

そして、40歳を越え、あるいは60歳ちかくなった男の前に、7歳の少女として現れるかつての恋人。
男に対する愛情は変わることがない。
積もる話が出来たとしても、はてさてその先どうしたものか・・・と要らぬ心配をしてしまうのだ。

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『月の満ち欠け』 佐藤 正午 著 岩波書店

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