『一人称単数』

ブックレビュー ☆4つ

『一人称単数』 村上 春樹

8編からなる短編集。

本を読んでいる途中で、なにかのキーワードやエピソードに想起されて、 ”過去の記憶” や ”未来の想像” や ”まったくの空想” に思考が飛んでしまうことがある。
目を開いてページを見ているのに何も見えてなくて、頭がべつのどこかへ行ってしまっている。
村上春樹の小説を読んでいると、そんなふうに思考がどこかへ飛ぶことが多い気がする。
逆に言うと、集中して・夢中で物語を追うような話じゃなかったってことなんだけど。

ただ、ストーリーに夢中になって一心不乱に読んでいる本よりも、そんなふうに読むことから横にそれてしまうことが多い本のほうが、読み終えて好きだなぁと思うことが多い。

さて、この短編集のなかでは、『ウィズ・ザ・ビートルズ』と『品川猿の告白』が好み。

『ウィズ・ザ・ビートルズ』
高校生の時に一度だけ話をしたガールフレンドのお兄さんと、10数年後に偶然再会し彼女のその後を知る。
これと似たテイストの短編が『女のいない男たち』にもあったな。
主人公がガールフレンドのお兄さんに乞われて、持っていた現代国語の副読本を朗読するシーンがあるけど、あそこ結構好き。
実は僕も朗読(読むのも聞くのも)が好きだったりする。ま、そんな機会はないけど。

まったく個人的な興味だけど、著者は何故ガールフレンドが大学卒業後に勤めたのを損保会社に設定したのか、その周辺業界に身を置くものとして少し気になる。
きっと大した意味はないんだろうけど。

『品川猿の告白』
寂れた温泉旅館で、そこで働く猿から身の上話を聞いてみると、その猿は恋心を抱いた女性の名前を盗むのだと。
設問・この猿の行動は何を象徴的に示唆しているのでしょう?

どの話も、なんとなくわかるような気もするけど、やっぱりよくわからない。
よくわからないところが、良いのかな。

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『一人称単数』 村上 春樹 著 文藝春秋

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