『さざなみのよる』
ブックレビュー ☆5つ
『さざなみのよる』 木皿 泉
木皿 泉さんの2作目の小説。
末期のがんに侵されたナスミは、富士山が見える病床で、残される夫や姉・妹、同居する大叔母のことを気遣いながら、穏やかな気持ちで最期を迎える。
享年43。
ぽちゃんと落ちた石が水面に立てる波紋のように、生前のナスミに関わった人々の心にナスミの思いが広がっていく。
「よいことも悪いことも受け止めて、最善をつくすッ!」 その言葉通りに生きた。
がさつな印象だが、何故か惹かれる。
ナスミの言葉は、生きていく人たちの心の支えになっている。
命が宿ること、生きることは祝福なのだ。
主人公の死から始まる物語だが、重くも暗くもない。
むしろ優しく暖かい思いが、さざなみのように心を揺さぶる。
おんばざらだるまきりくそわか(生きとし生けるものが幸せでありますように)