『桜の森の満開の下』
ブックレビュー ☆4つ
『桜の森の満開の下』 坂口 安吾 + しきみ
本書は、文豪の名作と人気イラストレーターのコラボレーションで、小説としても画集としても楽しめる『乙女の本棚』シリーズとして出版されたなかの一冊。
坂口安吾を読むのは初めてだが、絵本みたいで桜の下で酒を飲みながら読むにはちょうど良いかと思い、図書館で借りてきた。
満開の桜が発する幻想的な美しさと、怪しさ。
今でこそ、桜が咲くと人が集い陽気に騒ぐが、江戸時代より前はそうではなかった。
それどころか、桜の花の下は恐ろしい場所だと考えられていた。
桜の森があるため旅人が通らなくなった鈴鹿峠に住む山賊と、山賊がさらってきた女。
女の妖しさと狂気は、山賊をより残忍にしていく。
女に請われ都に移り住んだ山賊は、女が命じるままに邸宅へ忍び入り、着物や宝石と共にその家の住人の首を持ち帰る。
その首で、まるでお人形さんごっこでもするように、無邪気に遊ぶ女。
やがてそのような日々に飽きた山賊は、女を連れて山に帰るのだが、途中で満開の桜の下を通った時、女の正体に気づく。
満開の桜が恐ろしいのは、桜の花の儚さが、虚ろな空しさを呼び覚ますからなのか。
その秘密がわかった山賊は、虚無に吸い込まれたか・・・
桜の下でぼんやり読むには、この形式が良いかと思ったが、むしろ文章だけで情景を想像したほうが良かったかな。
その方が、より美しく、より恐ろしく感じられた気がする。