『パン屋を襲う』

ブックレビュー ☆3つ

『パン屋を襲う』 村上 春樹

『ホワイトラビット』 伊坂 幸太郎・『スケルトン・キー』 道尾 秀介と、3冊続けて犯罪小説。
って、これを犯罪小説って言ってよいものか疑問ではあるけど(笑)

本書は、『パン屋襲撃』 と 『パン屋再襲撃』 にそれぞれ手を加えて、オリジナルと区別するために『パン屋を襲う』 と 『再びパン屋を襲う』に改題し、1冊にまとめたもの。
随所に配される怪奇的なイラストが、物語の奇妙さを高めるのに効果的だった。

『パン屋再襲撃』 は何度も読んでいるが、『パン屋襲撃』は初期に早稲田文学に掲載されていたようで、今回初めて読んだ。

持って回ったような面倒くさい文章、だから村上春樹は嫌いなんだと言うアンチ村上春樹の声が聞こえてきそうな冒頭ではあるが、そんなところ昔から変わってないなぁと改めて思った。

ワグナーの曲名が変っていたり、パンを店で食べるか持ち帰って食べるかが違っていたり、というのは今回2作を並べることでの整合性をとったのかな。

その他にも、比喩や表現がいくつか変わっていたのは良しとして、〈ソニー・ベータ・ハイファイ〉が〈ソニー・ブルーレイ・レコーダー〉なったり、オリジナルには無かったコンビニが出てくるのは時代性かもしれないが、作者の意外な几帳面さを垣間見た気がする。
ま、ベータだろうがブルーレイだろうが、どっちでも良いのにと思うけど、せっかく手を加えたから今の時代の話にしたかったのかな。

それにしても、
「もう一度パン屋を襲うのよ。それも今すぐにね」
って、この不条理な感じ、やっぱり好きだなぁ、と村上春樹ファンの僕は思ったのだ。

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『パン屋を襲う』 村上 春樹 著 新潮社

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