『銀河食堂の夜』
ブックレビュー ☆4つ
『銀河食堂の夜』 さだ まさし
東京は葛飾の下町商店街の中ほどにできたカウンターだけの小さな店。
店の名は銀河食堂だが、食堂ではなく、スタンドバーなのに居酒屋なのだと。
品が良く、口数少ない謎のマスターに惹かれて、夜ごと集う常連客。
町内の、生きるのに不器用だったり不運が重なった人間たちの、いかにも昭和な感じの人情噺。
顛末を知る常連が語り部となる、6つの夜の連作短編集。
壁に掛かった柱時計が、ボオンと鳴って今宵も更けていく。
・ヲトメのヘロシ始末『初恋心中』
・オヨヨのフトシ始末『七年目のガリバー』
・マジカのケンタロー始末『不器用な男』
・まさかのお恵始末『小さな幸せ』
・むふふの和夫始末『ぴい』
・『セロ弾きの豪酒』
最終話で明かされるマスターの謎。
全体を通して、いろんな意味でなんともクサい。
だけど、クサいけど、悪くない。
人に向けられた著者の目の優しさ・暖かさが随所に感じられるから、かな。
少しは人に甘えたり頼ったりすれば良いのに。
それができない、かたくなな生真面目さがいじらしい。