『海うそ』

ブックレビュー ☆3つ半

『海うそ』 梨木 香歩

南九州の離島へ、人文地理学の調査で訪れた秋野は、50年後再び導かれるように島を訪れる。
若き日の秋野は、廃仏毀釈の名のもとに破壊され失われた文化財や信仰に思いをはせ、50年後には観光開発によって失われていく自然や風習に立ち会うことになる。
そして、その年月の間には島で関わった多くの人が亡くなっている。
ただひとつ、変わらずにあったのが海うそ(蜃気楼のこと)だった。

生きていく中で多くのものを失ってきた秋野だが、50年の時を経て変わらず現れた海うそを見たことで、決して失われたものや変わりゆくものへの無念や哀惜の思いを抱いていただけではないことに気付く。

「喪失とは、私のなかに降り積もる時間が、増えていくことだった。・・・・喪失が、実在の輪郭の片鱗を帯びて輝き始めていた。」 P.186

梨木さんの小説はいつもそうなのだが、読み終えた直後はさしたる感興を抱くことは無いのに、レビューを書こうと見返しているとジワジワと良さが滲み出てくる。
早い話、読解力が不足してるんだろうな。

Photo
『海うそ』 梨木 香歩 著 岩波書店

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