ブックレビュー ☆4つ
『女のいない男たち』 村上 春樹
短編集。
発売されてすぐ図書館に予約し待つこと半年、思ったよりずいぶん早く順番が回ってきた。
さて、村上春樹の短編の良いところは、彼の長編でしばしば感じる退屈な初めの数十ページを耐えなくて済むところだと思っている。
そのかわり、本書にはあまり面白くない数ページの”まえがき”があったが。
そして、村上春樹の小説の好きなところは、独特の比喩や機転の利いた会話で、そんな表現が出てくると、しばし読むのを止めて浸ることになる。
そういう意味では、この短編集は悪くなかった。
涙腺を刺激されたり、心をぎゅっと掴まれたりするような直接的な悲しさではなく、彼の小説にしばしば感じる、自分でもそんな部分があることに気付かなかった心の底をそっと擦られるようなあやふやな哀しさ・切なさもあったしさ。
ところで、シェエラザードは王妃ではなく、大臣の娘だったはずだが、そんな指摘は歌詞の改作に『示唆的要望』をするのと同じく、無粋なことかな。