『僕は、そして僕たちはどう生きるか』
ブックレビュー ☆4つ半
『僕は、そして僕たちはどう生きるか』 梨木 香歩
この哲学的なタイトルに身構えてしまう読者に、著者はまえがきでヒントを与えてくれる。
「群れが大きく激しく動く その一瞬前にも 自分を保っているために」
そして、14歳のコペル君、登校拒否の友人、奔放なその従妹、大人社会から見ると頼りなげに映るコベルくんの叔父、日本の言葉・風習に覚束ない豪州人を主な登場人物として、わかりやすく問題提起する。
教育の衣を被ったを屠殺・ドキュメンタリーを装ったレイブ・開発の名を借りた環境破壊・そして戦争
集団が一つの方向へ動こうとしているときに、自分の頭で考え判断できるようになるために、と。
自分が50歳を越えた身となっては、「どう生きるか」 と問われたときまず 「どう生きてきたか」 を考えることになる。
身勝手・傲慢・我が儘・浅ましさ・弱さ・卑しさ・醜さ・狡さ、そんな負の部分ばかりが思い浮かんで悲しく情けなくなってくるのだが、ただ一つの救いは、そのことに気づいたということか。
それはつまり、自分の立ち位置がわかっていることになるんじゃないかと思う。
そこから、どちらの方向へ動けばよいか、僕はどう生きようか、を考えれば良いのかな。
それを考えるには、ちと遅い気もするけれど。
『僕は、そして僕たちはどう生きるか』 梨木 香歩 著 理論社