『ユーミンの罪』 酒井 順子
荒井 由実 デビューアルバム 『ひこうき雲』 から、アルバムごとに収録された曲の歌詞と時代背景から当時の恋愛事情を読み解いている。
僕がユーミンを積極的に聴くようになったのは 『PEARL PIERCE』、19歳の時から。
それまでも、もちろん耳にはしていたが、奥手な僕はその頃ようやく色気づいたのか、まだ知らぬ大人の世界に憧れ、いかしたアレンジに心ときめいた気がする。
それ以来、アルバムが発売されるたびに、また 『PEARL PIERCE』 以前のものは遡って購入し、聴いてきた。
当時というか僕が20代の頃、デートと言えばドライブが定番で、デートの前の晩はコースを考え、持っていくカセットテープを選んだ。
季節や行先でカセットの顔ぶれは変わっても、そこからユーミンが外れることは無かった。
確認したわけではないが、周りの友人たちもおそらくそうだったと思う。
女の子の好みがわからない時でも、まぁユーミンだったら間違いない、という安心感があった。
もっと言えば、日本中ユーミンが大好き! くらいの勢いだったような気がする。
しかし、僕に限って言えば 『LOVE WARS』 から違和感を感じ、次の 『天国のドア』 を最後にユーミンを追いかけるのは止めてしまった。
27歳、まだ恋は現役だったし、それ以降も古いユーミンのアルバムは聴き続けていたので、決してユーミンを聴き飽きたわけではない。
ただそれまで感じられた情景、季節や風や光や影をあまり感じることが出来なくなった記憶がある。
それは僕の感性が鈍くなったのかもしれないし、そうであればユーミンには何の罪もないのだけれど。
ただ、本書の著者がユーミンを追いかけるのを止めたのは 『天国のドア』 の次に発売されたアルバム 『DAWN PURPLE』(1991年) だそうで、本書の考察も 『DAWN PURPLE』 で終わっている。
ちなみに、著者の酒井さんは1966年生まれで僕の3つ下、つまり同世代だ。
やはりこの頃から何かが変わったのか・・・
後にバブル景気と呼ばれる好景気が崩壊したのが1991年。
たまたまなのかもしれないが、本書を読んでいると、それほどまでに時代がユーミンの歌詞世界を後追いしていたような気がしてくる。
蛇足だが、1980年前後に発売されたアルバムを中心に今でもユーミンは良く聴いている。
僕が一番好きな情景は「経る時」で、一番好きな女性は「夕闇をひとり」 、そして一番好きなアルバムは 『PEARL PIERCE』 なのだ。
LPレコードの 『PEARL PIERCE』 の歌詞カードは1ページに1曲ずつ、それぞれ全面に安西 水丸 画伯のイラストが印刷されている。
ユーミンを描いた表紙を含め全10曲、11枚のイラストが楽しめる。そんなところも 『PEARL PIERCE』 が好きな理由ではある。