『アンジェリーナ』

ブックレビュー ☆5つ

『アンジェリーナ』 小川 洋子

古書店で何気なく見た棚の、一冊の背表紙に目を惹かれた。
僕が知っているその名詞はひとつしかない。
そして、それはまさしく、その名詞だった。

”佐野元春と10の短編” とサブタイトルにあるとおり、作家 小川洋子が音楽家 佐野元春の楽曲から着想を得て書かれた短編集。

収録されている短編と副題、物語のモチーフは以下の通り。

・アンジェリーナ - 君が忘れた靴 -
踊れなくなったバレリーナのトウシューズ

バルセロナの夜 - 光が導く物語 -
図書館で出会った男から託されたペーパーウェイト

彼女はデリケート - ベジタリアンの口紅 -
レンタルファミリーとして派遣される彼女と口紅

誰かが君のドアを叩いている - 首にかけた指輪 -
街中にひっそり建つ温室と失われてゆく体の記憶

奇妙な日々  - 一番思い出したいこと -
突然訪問してきた身勝手なおばさんが作る地図

ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 - 水のないプール -
海辺のリゾートホテル・ナポレオンフィッシュのいない水族館

また明日・・・ - 金のピアス -
TVニュースのエンディングに流れる声

クリスマスタイム・イン・ブルー - 聖なる夜に口笛吹いて -
クリスマスに思い出す二つの風景

ガラスのジェネレーション - プリティ・フラミンゴ -
嘘をついて林間学校を休み彷徨った夜

情けない週末 - コンサートが終わって -
コンサートの帰り道に迷い込んだ寂れた公園

失ったもの、損なわれたもの、亡くなった人、思い出せないこと
忘れていた心の隙間に、そっと手を当ててくれるような物語。

ところで、何かの拍子に思い出して、読みたくなる文章がある。
それが短編小説だったりすると、どの本に収録されていたのか探し出すのに苦労するが、今回はすぐに分かった。

飛行機の中、クリスマスに会えない恋人にむけて書く手紙。
クリスマスに思い出す、つつましくも切ない二つの風景のこと。

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『アンジェリーナ』 小川 洋子 著 角川文庫

大切な人も 離れてゆく人も
メリー・メリー・クリスマス

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