『ことり』
ブックレビュー ☆3つ半
『ことり』 小川 洋子
奉仕で幼稚園の鳥小屋の世話をする「小鳥の小父さん」。
「小鳥の小父さん」が、いわゆる孤独死しているところから物語は始まる。
小父さんには、鳥と小父さんにしかわからない言葉だけをしゃべるお兄さんがいた。
鳥小屋が良く見えるフェンスの窪みがお兄さんの定位置だった。
鳥に関する本ばかりを、図書館で借りる「ことりの小父さん」。
そのことに気づいて話しかけてくれた司書の女性に抱く淡い恋心。
小父さんとお兄さんが生きていける場所(生活範囲)はごくごく限られていた。
誰とも親しくなることは出来なかった。
でも、エンディングで小父さんは決して孤独死なんかじゃなかったことがうかがえる。
静かで優しい物語だ。