『その先の道に消える』

ブックレビュー ☆4つ
『その先の道に消える』 中村 文則

初めて読む作家で、新聞の新刊案内をみて予約したものの、ジャンルもわからず読み始めた。
間に二つの挿話を挟んだ2部構成になっている。

過去のトラウマから、それぞれに心に闇を抱えた若い刑事の富樫と、ベテラン刑事の葉山。

1部は富樫の目線。
殺人事件の現場で、惹かれていた女性(桐田 麻衣子)の関与を感じた富樫は、桐田を守るために道を踏み外していく。
葉山は、そんな富樫の行動に気づき呼び止めるのだが・・・。

本文との関連が不明な挿話を挟んで、2部は葉山の目線になる。
鋭い観察眼と推理で真犯人に近づいていく葉山。

サスペンスかと思ったが、途中からの緊縛・SMの描写には、うんざりして読むのを止めようかと思った。
その後も、神格化された緊縛や縄と日本民族の歴史、倒錯した性と崩壊していく人格、そして狂気の愛情、と読み進めるのに難儀だったが、葉山への興味で読みすすめた。
冷静沈着で、鋭利かつ聡明だけれど虚無的なところのある葉山、これがまたモテるんだよなぁ。

やがて桐田の素性が明かされ、挿話の関連も分かる。
深い心の傷を負った登場人物たち。
葉山の存在だけが救いのような話だった。

他の中村の作品を読んでみたいとは、あまり思わないが、葉山を主人公にした作品があれば読みたいと思う。

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『その先の道に消える』 中村 文則 著 朝日新聞出版

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