『YUMING TRIBUTE STORIES』

ブックレビュー ☆4つ

『YUMING TRIBUTE STORIES』 小池 真理子・桐野 夏生・江國 香織・綿矢 りさ・柚月 麻子・川上 弘美

[松任谷 由実デビュー50周年を記念して、六人の作家による書下ろし中短篇を収録したオリジナル小説集]

作家自身が選んだ曲から紡いだ6つの物語。

僕が積極的にユーミンを聴いていたのは80年~90年くらいまでかな。
アルバムで言うと、『流線形’80』から『天国のドア』まで。
もちろんその前後、荒井 由実 時代に遡って、また『天国のドア』以降も聴いてはいたけど、CDが発売されるたびに買っていたのは『天国のドア』が最後。
そして、最もよく聴いたというか好きなのは、80年代初頭の『昨晩お会いしましょう』から『PEARL PIERCE』『REINCARNATION』あたり。
だから、この6作品の中ではやはり「夕涼み」(『PEARL PIERCE』収録)が一番好きな曲だ。

・小池 真理子 「あの日にかえりたい」:学生時代に些細な事から仲たがいしてしまった女友達。古希を過ぎた今、生涯独身だった主人公(女性)は彼女のことがとても懐かしい。「あの頃のわたしに戻ってあなたに会いたい♪」ということか。

・桐野 夏生 「DESTINY」:日常の変化を嫌う独身男の、運命と呼ぶには大げさすぎる片思い。思いばかり先走ってしまうのは怖い。

・江國 香織 「夕涼み」:結婚を決めた妹と、幸せな結婚生活の中にかすかな影を見る姉。
夕涼みという言葉から感じる、夏の穏やかな爽やかな甘やかな印象は、良い意味で裏切られた感じ。

・綿矢 りさ 「青春のリグレット」:穏やかさには物足りなさを覚えてしまうのかな。実はそれはとても尊いものだと気づいても、過去は取り戻せない。曲のタイトルと小説のストーリーが一番しっくりきた。

・柚月 麻子 「冬の終り」:お互いに考えていることをうまく相手に伝えることができない、食品スーパーで働く女性たちにも冬の終わりは訪れる。

・川上 弘美 「春よ、来い」:どこか生きづらさを感じている38歳女性・29歳男性・13歳女性の物語が独立並行して語られるが、ラストで交わるかすかな接点。未来に希望を感じる。

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『YUMING TRIBUTE STORIES』 小池 真理子・桐野 夏生・江國 香織・綿矢 りさ・柚月 麻子・川上 弘美 著 新潮文庫

ちなみに、僕のユーミンに対する思い入れは『ユーミンの罪』のブックレビューにも少し書いている。
さらに言うと、この『YUMING TRIBUTE STORIES』の巻末解説を書いているのは、『ユーミンの罪』の作者 酒井 順子さんだ。

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