『沈黙博物館』

ブックレビュー ☆4つ

『沈黙博物館』 小川 洋子

小中学生の頃、勉強するふりをしてよくラジオを聞いていた。
とりわけドラマを聞くのが好きだった。
ラジオドラマ、耳から入ってくる物語は、読書と違い目を使わないぶん、より鮮明に情景をイメージできる気がする。

広大な屋敷に住む気難しい老婆に雇われ村を訪れた、若い博物館技師が指示されたのは、その村で亡くなった人の形見を集めて展示する博物館を造る、というものだった。
老婆が数十年かけて非合法的に蒐集した、「その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品」としての形見の品々の修復・整理。
そして、博物館を造る間にも亡くなっていく村人の形見を取得するのも技師の仕事だ。
老婆の娘だという少女と庭師と家政婦の援助を受けながら、仕事をすすめていく。

この小説を読んでいる間、これをラジオドラマで聞けたらいいのに、とずっと思っていた。
文章が素敵で、情景描写がすばらしくて、活字を追うよりも目を閉じて言葉をイメージに変えることに専念したくてしかたなかった。
物語の世界に深く入り込みたかった、戻れなくなるくらいに・・・

ところで、林をぬけた先にシロイワバイソンが野生し、沈黙の伝道師たちが過ごす修道院があるというこの村は、いったいどこにあるんだろう、いったいどこに。

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『沈黙博物館』 小川 洋子 著 

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