『人質の朗読会』

ブックレビュー ☆4つ

『人質の朗読会』 小川 洋子

海外ツアー中に反政府ゲリラに襲撃され、百日以上の拘束の末、犯人の仕掛けたダイナマイトの爆発で死亡した8名の日本人。

同じ場所で同じ時間に幕を閉じることになった8名だが、そこには8つの人生があった。
退屈と恐怖を紛らわすために行われた朗読会で静かに語られる、それぞれの人生のエピソード。
ファンタジックな、ノスタルジックな、ミステリアスな物語。

本著は、8名の朗読+それを盗聴していた特殊部隊 隊員の話しが、短編集の体裁をとって綴られている。
とても面白い設定だと思う。
そして、年齢も職業もツアーに参加した経緯もバラバラの人たちだが、直接的だったり、比喩的だったりの違いはあるものの、どの話も”死”を含んでいる。

自分がもしこの場に居合わせたら、果たして何を話すんだろう。
わざわざ語って聞かせられるような、興味深いエピソードなんて何も思いつかないんだけど・・・
死を覚悟して人生を振り返った時、ひとつくらいは人に話せる物語を思い出せるのかもしれない。

僕は、『B談話室』と『死んだおばあさん』が好みだった。

Photo
『人質の朗読会』 小川 洋子 著 中央公論新社

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