『ゴールデンスランバー』

ブックレビュー ☆5つ

『ゴールデンスランバー』 伊坂 幸太郎
2008年 本屋大賞・第21回 山本周五郎賞

目に見えない大きな力によって、首相暗殺の犯人に仕立てられていく青柳 雅春。
全く身に覚えがないことなのに、それを裏付けるような証言が次々に報告される。
そんな青柳の逃亡劇だ。

こんな大風呂敷を広げて、どう落とし前をつけるんだろう? と陳腐な表現だがハラハラドキドキしながら読み進めた。
伊坂幸太郎をあるいはミステリーを読みなれた方なら、結末はある程度予想できるのかもしれないが、そんなことを思いもしなかった僕は純粋に楽しめた。

500ページの大作で、

第一部 事件の始まり
第二部 事件の視聴者
第三部 事件から二十年後
第四部 事件
第五部 事件から三ヶ月後

の五部構成となっているが、大部分は第四部に費やされている。
読み終えたときはすっかり忘れていたが、あとで読み返してみると第三部で青柳のその後をわずかに伺い知ることができる。

その他にも、随所に散りばれられたエピソードがあとで意味を持ってくるあたりは、いつもの伊坂幸太郎の手法だが、終盤畳みかけるように意図が明かされるのは心地よい。

そして、ラストで、エレベーターに乗り合わせた女の子が青柳を追いかけてきて 「お母さんが、これ、押してあげなさいって」 と話しかけたセリフを読んだ瞬間、その行為と意図が予想でき、途端にこみ上げるものがあった。
年を重ねて涙腺が弱くなったということを差し引いても、素敵なエンディングだと思う。

ただ、実際のところ、見落としている伏線がまだいくつもあるんじゃないかという気がする。
時間を置いてからでは内容を忘れてしまう可能性が大きいので、出来ればすぐにでも読み返したいところだけど、読むのが遅い僕には残念ながらちょっと難しいな。

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『ゴールデンスランバー』 伊坂 幸太郎 著 新潮社

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