『キラキラ共和国』
ブックレビュー ☆4つ
『キラキラ共和国』 小川 糸
普通ならまず手に取らないタイトルの本書を読もうと思ったのは、これが『ツバキ文具店』の続編だから。
そういえば、「キラキラ」は鳩子がバーバラ婦人から教わった、辛いときや悲しいときに心の中で唱える魔法の言葉だった。
しかし読んでいると、鳩子は多部未華子だし、モリカゲさんは上地雄介だし、男爵は奥田瑛二、バーバラ婦人やマダム・カルピスは・・・もうそれぞれの顔が思い浮かんでしまって。
良くも悪くも、昨年ドラマ化された『ツバキ文具店』のキャスティングがあまりにしっくりきたからなんだけど、いまひとつ物語を自由に楽しめなくなってしまった。
今回も様々な代書を依頼される鳩子、それぞれの手紙は悪くはないが前作ほど心に響いてこない。
おそらく、代書屋の仕事ぶりが中心だった前作と違い、鳩子の新婚生活に主眼が置かれていて、代書の依頼に対するこだわりや気遣いが前作と比べて少なく、手抜きに感じたからだと思う。
それでも、草木の変化に季節の移ろいを感じながら、ゆったりとした時間が流れる鎌倉での鳩子の暮らしぶりはとても素敵だ。
また一年、鎌倉で暮らしたような気持ちにさせてくれる。