『街とその不確かな壁』
ブックレビュー ☆4つ
『街とその不確かな壁』 村上 春樹
物語は三部構成になっている。
第一部:十七歳の僕と僕が恋した一つ年下の少女との実際の世界と、大人になった僕が入り込んだ、少女の想像上の〈壁に囲まれた街〉での物語が並行して進む。
『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を思い起こしたが、その関連性については、著者のあとがきでふれられている。
第二部:〈壁に囲まれた街〉から戻った、45歳になった僕の現実世界の話。
現実世界の話として一番わかりやすい部分なのだが、最も現実的な役どころの前図書館長の子安さんの非現実さが好印象。
第三部で明かされる、新図書館長として働く僕の実態?も、そうきたか、と。
第三部:舞台は再び〈壁に囲まれた街〉に、地理的にも時間的にも戻る。
僕が〈壁に囲まれた街〉から現実世界へ戻ることを示唆して物語は終わる。
全体として、幻想的で哲学的なところもあり、どう解釈したらよいのか分からないところが多いが、これが村上春樹なんだろうな。
読後感は悪くない。