『富士山』

ブックレビュー ☆3つ

『富士山』 平野 啓一郎

「些細なことで、私たちの運命は変わってしまう。あり得たかもしれない幾つもの人生の中で、何故、今のこの人生なのか?」
というテーマで書かれた5編からなる短編集。

確かに、表題作の『富士山』では、停車中の新幹線の車窓から別のホームに泊まる車両内の女の子が示した合図を見たことで、結婚を考えていた二人の運命は大きく変わってしまうのだが、他の4編は。

『息吹』は、パラレルワールドを描いたSFかと思いきや、そのオチ?という拍子抜け。

『鏡と自画像』は、単なる妄想癖の男って感じだし、

『手先が器用』は、幼いころ祖母から言われた一言が自分の長所を伸ばしていくことになり、仕事にも繋がる。
確かに些細なことがその後の人生に大きな影響を与えることとなるのだが、話しが小さいというか・・・実際作品的にも5ページと他と比べて圧倒的に短い。

『ストレス・リレー』は、まるで感染症のように「不愉快な気分」が次々に伝染していく話だが、何故この人生?と思うほど大袈裟な話じゃないし。

なにせ冒頭に記載した紹介の一文から、ドラマティックな話を期待してしまったので、ガッカリ感が大きかった。

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『富士山』 平野 啓一郎 著 新潮社

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