『向田理髪店』
ブックレビュー ☆4つ
『向田理髪店』 奥田 英朗
北海道中央部の、かつては炭鉱で栄えた苫沢町も今ではすっかり衰退してしまった。
財政難・過疎化・高齢化・嫁不足・後継者難、町や住民の抱える問題は山積。
そんな町で理髪店を営む向田康彦(53歳)の周りで起こった出来事を、ほろ苦くときにおかしく・・・「変化がねえ町だ」 なんて言いながら、ずいぶん賑やかに話がすすむ。
都会と違い、匿名でいられない田舎の町。
町で起こったことはみな自分のことのように、時におせっかいなほど世話を焼く。
僕はそういうの苦手だなぁと思いながらも、はたから見ると結構楽しそうだし、ちょっと羨ましくなったりしてくる。
ただ、主人公と同年代の僕としては、親を見送るということに関しては、真剣に考えるところがあった。
親をきちんと見送りたい、と思う。それは親に対しての思いというよりも、子供たちに親(子供からしたら祖父母)の介護・世話を押し付けるわけにはいかないから。
絶対に親より先に逝くわけにはいかないのだ、と最近時々考える。