『ラッシュライフ』
ブックレビュー ☆4つ
『ラッシュライフ』 伊坂 幸太郎
仙台を舞台にした五つの物語が同時進行し、それぞれの登場人物が交錯する。
ひとつのストーリーを主要人物の登場シーンごとに分けてシャフルしたような構成で、並行して進んでいたと思った話は少しずつ時間がずれている。
ある人物の後日談が、別の人物のエピソードで先に語られていたりするので、その都度戻って読み返すことになる。
それぞれの物語の繫がりがはっきりしないまま読み進めるので、いまひとつ入り込めず、読み終えるのにずいぶん日数がかかってしまったが、すべてが分かったうえで読み直してみると面白くて一気に読めてしまった。
ただ、読み直してみると、すべての物語が一つの時間軸で考えると、整合性が取れないところがある気がする。
すべての物語に共通して登場する、駅前に立つ白人女性と、駅前にいた野良犬が時間経過の手がかりになるのだが、それがどうも時間の流れが合わないんじゃないかと(きちんと並べて確認したわけではないので断言できないけど)。
本文でも話題としてたびたび出てくる、単行本の表紙にもなっているエッシャーのだまし絵(階段を上り続けているのに、元の場所に戻ってくる)のように、どちらの話が先なのかは、どこを起点に見るかで違ってくる、という作者の遊びなのかも。
そして、ちょっと気になったのが、老夫婦の強盗が持っていた拳銃と、リストラされた豊田が手に入れた拳銃が同じものと思わせる記述は無かったこと。別物なのかな・・・。
だとすると、老夫婦の強盗のエピソードだけが浮いて感じるんだけど、何か見落としてるのかな。