『マカン・マラン』
ブックレビュー ☆4つ
『マカン・マラン』 古内 一絵
人目につかない路地裏で深夜だけ営業するカフェ ”マカン・マラン” の店主は、ピンクのウィッグとド派手なドレスを着た中年のドラァグクイーン。
ガムランの流れる薄暗い店内で、悩みを抱えた客に提供されるのは、体に優しい野菜中心の料理とハーブティー、そして心に響く言葉。
料理は、単に見た目が美しいとか味が絶妙とかいうのではなく、素材の持つ効能を考えてお客の体調や精神状態に合わせて作る。
そして自らが性の問題や病で苦しんできたからこそ言える深みのある言葉。
奇抜な設定だが、この手の小説がたいがいそうであるように、美味しそうな料理にそそられるのは当然として、キャラクター設定や文章・言葉使いがとても丁寧で、読みやすい作家さんだと思う。
すでに続編が2冊出ているようなので、楽しみ。
「苦しかったり、つらかったりするのは、あなたがちゃんと自分の心と頭で考えて、前へ進もうとしている証拠よ」
「悩むことが大切な時期だってあるのよ」