『ツバキ文具店』
ブックレビュー ☆5つ
『ツバキ文具店』 小川 糸
鎌倉にある、文房具の販売と代書屋を営むツバキ文具店の跡を継ぐことになった雨宮 鳩子。
夏・秋・冬・春の4部で構成されるように、鎌倉の四季と共に綴られる代書屋としての鳩子の仕事を通した暮らし・日常。
短い期間ではあるが僕自身、鎌倉に暮らしたことがあるので、鎌倉を舞台としたドラマや小説はそれだけで2割増し贔屓目で見てしまうのだが、それを抜きにしてもとても面白かった。
知っている地名や寺社がたくさん出てきたり、知らなかった鎌倉の風習や年中行事がわかったり。
字体や、それにあわせて筆記具やインクの色、紙や封筒・封印・切手にいたるまでこだわり、依頼者の心に寄り添って代筆する塔子の仕事ぶりはとても興味深かったし、知っているようで知らなかった手紙のしきたりや作法を学べたのも良かった。
やっぱり鎌倉って良いなぁ。手書きの手紙、最近書いてないなぁ。
文中に多用されていた言葉を借りると、なんというか ”ふわり” ”ふわふわ”とした読後感だった。
「失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいい」 P.258