『シティポップ短篇集』
ブックレビュー ☆4つ
『シティポップ短篇集』 平中 悠一 編
80年代に流行っていた都会的で洗練された音楽がシティポップとして近年見直されているみたいだけれど、当時そういったジャンルの曲をそのように呼んでいた記憶はなく、ただ単にニューミュージックと一括りにしていたように思う。
ただ確かに、当時10代後半から20代だった僕は、これらの楽曲を、ある種憧れをもってよく聴いていた。
例えば、大瀧詠一や山下達郎、佐野元春・南佳孝・角松敏生・杉真理・門あさ美 等々。
そして、なんなら今に至るまでずっと聴き続けている。
だから、本書が新聞の書評欄で紹介されているのを見て、懐かしさを覚え、興味深く感じた。
だって、この短篇集に入っている、片岡義男・川西蘭・山川健一なんて本当に大好きで、よく読んでいたから。
(原田宗典・平中悠一は一冊ずつ読んだ記憶があるが、銀色夏生と沢野ひとしは未読)
この短篇集の中で、実際に作中にシティポップが流れているのは、川西蘭の『マイ・シュガー・ベイブ 』だけだが、確かにシティポップが流れていたあの時代に発表された小説、そして人気があった作家たちだ。
今回、どの作家も何十年かぶりに読んだが、やっぱり好きだな。
なんといっても登場する人物の設定が素敵だ。キュートで(川西蘭)スマートで(山川健一)エレガント(片岡義男)。
やはり小説の中の女性は魅力的じゃないとね。
この短篇集に収録されている中で、僕が読んだ記憶があるのは川西蘭の『マイ・シュガー・ベイブ 』のみだが、一番好きなのもこの作品。
これは、川西蘭の『ラブソングが流れる部屋』に収録された4篇の中のひとつだが、あの頃読んだ川西作品の中でもとりわけ気に入っていた短篇集だ。
久しぶりに本棚から引っ張り出して、読み返したくなった。
当時は、このような流行を軽薄短小と揶揄していたような気もするが、素敵な時代だったと思う。
『シティポップ短篇集』 平中 悠一 編 田畑書店