『いつも彼らはどこかに』
ブックレビュー ☆4つ半
『いつも彼らはどこかに』 小川 洋子
本のタイトルは、「どこかに」 で止まっている。
どこかに・・・いる(存在)、それとも どこかに・・・行ってしまう(不在)、か。
『帯同馬』 『ビーバーの小枝』 『ハモニカ兎』 『目隠しされた小鷺』 『愛犬ベネディクト』 『チーター準備中』 『断食蝸牛』 『竜の子幼稚園』 の8編からなる短編集。
誰からも忘れ去られた、あるいは誰にも気にも留められない、ような人。
それぞれのタイトルに使われている生き物は、そんな人たちを象徴し、または暗示する。
そして、著者の彼らに向けられた眼差しはとても優しい。
小川 洋子さんの文章は、読んでいてひっかかるところがない。
まわりくどい言い回しや小難しい表現が無く、それでいて独創性がある。
なんというか、洗練された礼儀正しい文章、という感じがする。
それは読んでいて、とても心地が良い。