『口笛の上手な白雪姫』

ブックレビュー ☆4つ

『口笛の上手な白雪姫』 小川 洋子

8篇の短編集

「先回りローバ」
吃音の少年と、彼の発する言葉を拾い集める妖精のような小さな老婆。

「亡き王女のための刺繍」
子供服の仕立て屋へ、子供のころは母親に連れられて、大人になってからは知人の出産祝いを買うために訪れる女性。

「かわいそうなこと」
”かわいそうなこと”を集めて、ノートに記録する少年。

「一つの歌を分け合う」
死んだ息子が主演で舞台に立つのだと信じて、ミュージカルを観に行く伯母に付き添う。
11年後に偶然同じミュージカルを観た僕に、その時の記憶が蘇る。

「乳歯」
迷子癖のある少年は、両親との海外旅行先でも迷子になり、迷い込んだ薄暗い聖堂の柱の上に、不気味な浮彫を見る。

「仮名の作家」
すべての小説を一言一句違えず暗記するほどに愛する作家の読者の集いに参加した女は、小説に存在しない架空のシーンについて作家に質問する。

「盲腸線の秘密」
廃線の危機にある鉄道を存続させるため、曾祖父と ひ孫は秘密の作戦を決行する。

「口笛の上手な白雪姫」
公衆浴場の片隅で、母親が体を洗う間に口笛を吹きながら赤ん坊の世話をする小母さん。

短編集を読むとき、そこに共通テーマというか通奏低音のようなものがないか探してしまう。
それが作者の意図したものかわからないし、まったく見当違いかもしれないけど。
今回感じたのは、ふさわしい敬意。

ふさわしい敬意を与えられ、すべては救済される。
少年の吃音は治り、写真の中の少女は微笑み続ける。
かわいそうなものたちはノートの中に居場所を見つけ、伯母はすきなだけ泣くことができた。
少年が迷子になることはなくなり、子供たちは森の奥から帰る。

読み終えたとき、ちょっと救われたような気持になった。

「一つの歌を分け合う」が一番好きだな。
伯母さんの言葉「正しすぎる行いは、時に人を傷つけると思わない?」

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『口笛の上手な白雪姫』 小川 洋子 著 幻冬舎

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